クライアント
IBM Rational Client Support(RCS)は、IBM Rational Software Delivery Platformをサポートしています。これは、ソフトウェアやシステムの配布に必要な包括的ソリューションを提供するオープンな製品群です。 RCSは、企業がソフトウェアの提供プロセスを自動化したり、統合管理することを支援するグローバルな組織です。
課題
IBM RCSは、トランザクション調査(訳注:企業全体ではなく特定の業務プロセスにおける顧客接点に関する調査)による顧客満足度を成功の重要な指標にしています。調査によると、顧客は概ね満足していましたが、問題解決のスピードと正確さに若干の改善余地がありました。スタッフの顧客対応や技術のス キルは高かったのですが、RCSはトラブルシューティングのパフォーマンス向上を支援するようケプナー・トリゴーに依頼しました。課題は、問題解決を改善し、エスカレーションを減らし、解決時間の短縮によりサポートコストを削減し、同時に顧客満足度を向上することでした。 同社が持つ非常に複雑な技術環境に対応するため、迅速に正確な情報を集めて顧客とのやり取りを最適化できる「効率的で、シンプルで、拡張可能な問題解決アプローチ」が求められていたのです。
ソリューション
RCSとケプナー・トリゴーは、能力開発、コーチング、プロセス改善、ヒューマンパフォーマンスサポートを通じて問題解決能力を向上させるため、KT-ITSMW パイロットプログラムを開発しました。アジア太平洋地域でのパイロット成功後、このプログラムは世界中に展開されました。その後の18か月で、サービスエンジニア全員を含む500名以上の人が問題解決のためのKTプロセス研修を受講しました。このプログラムには、コーチングの有効性を測定・管理するモデルやツールが含まれています。RCSはパフォーマンスを維持するために、論理的KTアプローチや「KT的ふるまい」の継続的な適用を促進するための目標を設定し、優秀な適用事例を表彰したり、KT法の能力向上をボーナスや昇格に関連づけるようにし ました。KT-ITSMWは、その確かな成功実績をもとに、ソリューションを提供しました。当初14名のTACエンジニアが、KT-ITSMWプログラム・リーダー(PL)の認定を受けました。このチームは、200名のTACエンジニア達に、実践的な分析とコミュニケーションスキルを提供し、業務関連のコーチングを行い、新たなアプローチを導入する上で、管理チームがその作業環境に適応できるよう取り組みました。顧客とのやり取りの大半がメールやチャットで行われるため、オンライン上でのコミュニケーションは、重要なスキルセットです。ケプナートリゴーは、ソーシャルメディアのタイムライン、相手の主張を認めた上で、自身の意見を主張するコミュニケーション、顧客中心の言動など、電子コミュニケーションについて、同社に助言を行いました。
KTプロセスは、開発時欠陥トラッキングとエスカレーションデータベース等のビジネスツールに統合されています。エスカレーションの記録や変更要求へのリンクなど、すべての問題分析の詳細情報はセントラルリポジトリに保存され、世界中からアクセスできます。 このように、KT法のPAやSAプロセスのためのカスタムアプリケーションが日々開発され続けています。また、DAプロセスもRCS内の重要な管理ツールのひとつになりました。
成果
RCS社は、ハーバードビジネスレビュー1994年3-4月号「サービスと利益の連鎖を機能させる」の記事でKT-ITSMWについて次のように述べています。顧客サービスのギアの入れ替え:無関心のゾーンから好意のゾーンへ このプログラムにより、トランザクション調査での顧客満足度向上という第一の目的をすぐに達成できました。総合スコアは、ヨーロッパで5%、北米で3.5%増加し、世界全体で4%改善して、満足度は90%を超えました。さらにインシデントバックログの数は、世界全体で25%以上減少しました。問題解決時間が短縮し、顧客との対話が改善されたため、マネジメント層のKT-ITSMWへのコミットメントが強まりました。不満を持つ顧客の全体数が減ると、不適切な対応や対応の遅さに対する不満のレベルも軽減しました。問題の引継ぎやエスカレーションも改善しました。 また同社は、KT-ITSMWアプローチとKTプロセスのおかげで、従業員の離職率が劇的に低下し、日々の優先事項が明確になったと述べています。
同社は、今では顧客の問題に取り組む自信がついたと述べています。顧客との信頼関係を築くために問題の根本原因を見つけることは大事ですが、それと同じぐらい、特定データの必要性や想定原因を疑うことの重要性を説く能力は重要です。 RCSは現在、顧客との強力で長期的な関係を築くために、トランザクショナル(その場限り)でなく、よりコンサルタティブ(教育的)なテクニカルサポートを提供しています。 IBM Rationalに留まらず、IBM全体でKT-ITSMWプログラムを展開する企画が現在進行中で、今後顧客サポート改善の拡大が期待されています。
スコアカード
- 顧客満足度5%向上
- バックログを25%削減
- エスカレーションと引継ぎの改善
- 最適化された顧客対応
- マニュアル的ではなく、よりきめ細かい助言ができる顧客との関係
- 退社率の減少