クライアント
マイクロソフトのカスタマーサービス&サポート(Customer Service & Support : CSS)は、世界191か国、46言語で、自社の製品・サービスに関するサポートを顧客に 提供しています。支援型、仮想型、コミュニティ型のフォーラムを通して年間110億件 にも及ぶ顧客のサポートを行っており、CSSのテクニカル・エキスパートやカスタマ ー・サービス・プロフェッショナルは、顧客が製品、サービス、デバイスをどのように使 用しているかについての独自の洞察を、自社の商品を通してカスタマードリブンの改 善へと結びつけています。
2014年にSatya NadellaがCEOに就任した際に「グロース・マインドセット」戦略を策定し、顧客満足と生涯学習へのコミットメントを重視する文化の重要性を強調しました。それ以来、企業価値はほぼ3倍になりました。そして、CSSは問題解決にケプナー・トリゴーの合理的思考プロセスを取り入れることによって、顧客へより良いサービスを提供するべく、ケプナー・トリゴーと提携しました。まずはトレーニングと、 実務への適用に焦点を当てたコーチングから始め、世界中のCSSの手順や指標へのKT法の組み込みを進めています。
プロジェクト
マイクロソフトは、自社のエンジニアが問題を整理/明確化/優先順位付けし、顧客の抱える問題の根本原因を正確かつ迅速に見つけ出し、最適な次のステップについて意思決定し、顧客にとって将来起こり得る問題を最小化することを上手く実施できるようにするために、合理的思考プロセスの適用を支援してほしいとケプナー・トリゴーへ依頼しました。ケプナー・トリゴーは、CSSが顧客の問題をより効果的かつ効率的に解決できるようにするために、一貫して再現可能なアプローチを提供し、顧客重視の文化を醸成するというSatyaの戦略を強力に後押ししました。 本プロジェクトはルーマニアにおいて、KTプロセスの活用を同僚へ教え、支援する3名のプログラムリーダーを認定するところから先行してスタートしました。非常に良好な結果を得た後、プロジェクトはバンガロールやリスボンへ拡大され、5つのグローバル拠点で活動している16名の意欲的なプログラムリーダーと共に、プロジェクトは拡大を続けています。その結果、1年間で1,200名以上のエンジニアがKT法を活用できるようにトレーニングされました。
主な目標
- 解決までの日数(Days To Solve : DTS)の短縮
- インシデント1件あたりの解決までの時間(time minutes per incident/net effort : TMPI) の短縮
- 顧客満足度の向上
- チームでの協力の促進
- 顧客重視のマインドセットの醸成
- 超一流の問題対処エクスペリエンスの推進
プロジェクト当初の効果
KT法のトレーニングとカスタマーサポートにおける効果を測定するために、ワークショップの前後3か月において主要な指標を計測しました。
2017年4月から2018年4月までにトレーニングを受けた1,200名のサポートエンジニアおよびマネジャーの、当初の1年間における全体的な改善の結果は以下の通りとなりました。
- 解決までの日数(DTS)が、全体で1,033,000日(1件あたり約1日)短縮
- インシデント1件あたりの解決までの時間(TMPI)が、全体で73,887,000分(1件あたり27分)短縮
- 顧客満足度が3.3%向上
トレーニングの域を越えた効果
ケプナー・トリゴーのトレーニングプログラムは、超一流のサポートを顧客に提供するというCSSのコミットメントを強固なものにしています。ワークショップの受講者はさまざまな所属ユニットからエンジニアやマネジャーが選ばれ、同僚と経験を共有しました。KT-PSDMのトレーニングは、日々の業務でのコーチング、トレーニングの認定、現地でのマネジメント会議によって、職場で意識を高め、新たな行動を強固なものにすることを下支えしています。
マイクロソフトは、業務効率や顧客からの感想について効果を計測することに加えて、プログラムに対する受講者の満足度も調べています。結果として、KTトレーニングを受講したエンジニアとマネジャーの92%から高い評価を得ました。ベテランも新しく入社した従業員も同じように高い評価をしていることがわかりました。
エンターテイメントと教育的な内容、非常に優れたファシリテーターとトレーナー、そして素晴らしい多様なグループ。熱心な意見交換ができ、私にとっては大きな付加価値となりました。
ワークショップはとてもインタラクティブで、これまで参加したどのワークショップやトレーニングよりもインタラクティブでした。他のチームの人たちと交流し、一緒に仕事をする機会を得ることができました。
顧客に焦点を当て続ける
グローバルCSSプログラムチームは、トレーニング受講者にKTプロセスの高度な実務への適用を学習してもらうために、マイクロソフト独自のケーススタディを作成し、さらなる改善を推進しています。また、デジタルバ ッジによる認定、KTプロセスの適用事例を紹介する共有サイトやニュースレターなど、部署や地域を越えてKTプロセスの知識や洞察を共有する多様な機会を提供しています。さらに、KT法の活用をマイクロソフトのパートナー企業へ拡大するような機会も検討されています。
CSSは、ワークフローにKT-PSDMを適用するために、KT-PSDMのテンプレートをサービスツールに組み込み始めており、文書化、コミュニケーション、引継ぎをより良いものにしようとしています。KT-PSDMの活用のトレーニング、コーチング、業務への組み込み、表彰などを通じて、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)の向上に向けたこれらの力強い取り組みは、CSS全体で採用されています。
受講者からのアンケートの結果、ワークショップを受講したエンジニアやマネジャーはKT-PSDMの活用に熱心で、ワークショップやそこで得られた新しいスキルの適用について前向きな経験が得られたと報告しています。最終的に、7,000名を超えるCSSのチームメンバーがKTプロセスを使用することによって、解決までの時間を最小限に抑え、顧客満足度を最大化し、顧客重視のマインドセットをさらに高いレベルに引き上げ、その結果、マイクロソフトの顧客はより良いサポートエクスペリエンスを体験することになるでしょう。